写真撮って専門誌に発表

3年ぶりの日本のフィールドシーズンということで、毎週のように出かけており更新が滞っておりました。


さて、連休でちょっと一息ついたということもあって、久しぶりの更新です。


おなじみのナショナルジオグラフィックニュースから


豪州で発見、道具を使う初の野生魚
岩を利用、道具を使う初の野生魚
貝を砕く、道具を使う初の野生魚
強力な歯、道具を使う初の野生魚


 「餌である二枚貝を岩にぶつけて割る」という行動をもってして、道具の利用であるとするのには議論がありそうです。実際、この発見を論文にまとめた著者は「査読者の意見も分かれて、学術誌での発表までに6年を要した」とのこと。


ここで注目したいのは、この道具利用の是非ではなく、この報告を行った論文についてです。


Jones AM (2011) Tool use in the tuskfish Choerodon schoenleinii? Coral Reefs, online published.


 誰でもPDFを閲覧できるので、ナショナルジオグラフィックニュースに掲載された写真とともに報告文も読むことができます。わずか1ページの報告なのですが、この雑誌「Coral Reefs」には、オリジナル論文の他にも、こういうあまり観察例のない事象を写真入りで報告できる「Reef Sites」というコーナーがあるようです。


Reef Sites -Reef Sites are not small articles. The emphasis is on high quality photograph(s) with a short explanatory text (including no more than 3 references). The topic must be scientifically interesting (e.g., an unusual event, observation or phenomenon). The length of a Reef Site should not exceed 450 words, including title, references, acknowledgements, and author details.


「Reef Sites」のコーナーはいわゆる(小)論文を載せるわけではない。短い説明文(と3引用文献以内)をつけた高解像度の写真に力点をおいたコーナーだ。トピックとしては、科学的に興味深い出来事、観察例、現象でなければならない。説明文の長さは450ワード以内で、これにタイトル、引用文献、謝辞、著者の詳細などが含まれる。


Coral Reefs' Instructions for authors (pdf, 100 kB)より


珊瑚礁関係ではよく知られた雑誌ですし、このような有名雑誌にこういうコーナーがあるというのは良いですね。結構、おもしろい事象を研究者でない人が撮影することもあるでしょう。実際、今回もダイバーが撮影した写真を研究者に見せたことからはじまったようです(第一著者が研究者、最終著者が撮影者)。


珊瑚礁に限らず、陸上生態系でも、鳥とか獣とか虫などでおもしろい現象を撮影する機会があります。もちろんそういう場合でも、短い文章をつけた写真付きの論文を、各専門誌に設けられている「Notes」とか「Short Communications」といった短報コーナーで報告することも可能ですし、しばしば目にします。とはいえ、デジカメ時代で簡単に撮影できる昨今では、こういう画像専門のコーナーを設けておくのも、雑誌記事の多様性をキープする上では良い方法だと感じました。