島の生物学
島嶼生物地理学の理論を提唱し、群集生態学のリーダーシップをとっていたマッカーサー(Robert MacArthur)は、1972年にわずか42歳という若さで亡くなりました。 マッカーサーに強い影響を受けた研究者たちが集まり、1975年に彼に追悼の意を示し「Ecology an…
Perspectives in Plant Ecology, Evolution and Systematics という雑誌で、「Comparative ecological research on oceanic islands(海洋島の比較生態学研究)」というタイトルの特集号が組まれています。 Perspectives in Plant Ecology, Evolution and Sy…
群集生態学において「種のプール(species pool)」という概念はとても大切です。いろいろな場面で重要になってくるので整理しておきます。 島嶼生物地理学でも、島に移住してくる種というのは、島から近い他の陸地の群集、つまり「地域の種プール(regional…
ナショナルジオグラフィック ニュースから 「新種のメクラヘビ、生息分布の謎に迫る」 ミミズそっくりの小型(せいぜい全長20cm)のヘビ、メクラヘビ類は、地表や地中にいるアリやシロアリの卵や蛹などを食べると言われています(もちろん人に危害は加えない…
日本人によって行われた独創的な研究が海外の研究者に無視されているという話はしばしば耳にする話です。昔は日本人は日本の雑誌に日本語で論文を発表していたため、海外の研究者はそれを見ることも読むこともできず、気づかれなかったと言っても良いでしょ…
ナショナルジオグラフィック ニュースから 「ホビットは100万年前からいた?」 以前にも少しふれたフローレス原人の続報です(島の法則:ヒトも島では小型化した?)。インドネシアのフローレス島から化石が見つかった小型のヒト属の一種ですが、100万年前か…
半分の島と書いて「半島」、また英語の「peninsula(半島)」は「pen(ほとんど)+insula(島)」が語源だそうです。 実際、基部がくびれた半島は、ほとんど島のようにみえることもあります。ということは、半島でも島と同様な種の多様性パターンを示すとし…
『ウィルソンとマッカーサー以来「島嶼生物地理学(Island Biogeography)」は生態学において重要なテーマですが、近年ますますこの分野が脚光を浴びています。』 と紹介する時、「island biogeography」のキーワードで Web of Science *1で検索をかけて、こ…
面積が増加すると種数が増加します。当然、ある種の個体数も面積とともに増加することが予想されます。では、ある種の個体群密度(面積あたりの個体数)は、面積が増加するとどうなるのでしょうか。増加するのか、減少するのか、それとも一定なのか。 マッカ…
島の面積とともに種数が増加する(参考:島面積と種数の関係)。また、島が本土(Mainland)から遠ざかる(隔離度が増す)につれ種数が減少する。これは、絶滅率が島の面積とともに減少すること、そして移入率が島の隔離度とともに減少することによって説明…
ナショナルジオグラフィック ニュースから 南硫黄島沖の海底火山:火山島 南硫黄島沖の海底火山:噴煙 南硫黄島沖で海底火山が噴火しているらしい。北硫黄島、硫黄島、南硫黄島は、火山列島と呼ばれるように、比較的最近の火山活動で形成された島です。もし…
大きな島には、小さな島よりも多くの種類の生物が生息しています(参考:島面積と種数の関係:メカニズムのまとめ)。外来種もまた大きな島には持ち込まれやすく定着しやすい可能性が指摘されてきました(参考:島が大きくなると外来種数も増える)。つまり…
種の絶滅は、その果たしていた生態系機能が消えてしまうこと意味しています。しかし、実際には生態系機能の消失は絶滅する前から起こっています。 熱帯、亜熱帯域に分布するオオコウモリ類(Fruit bats)は、植物の種子散布に重要な役割を果たしていると考え…
大きな箱の中に小さな箱が、そして小さな箱にはさらに小さな箱が入る構造を「入れ子」と呼んでいます。大きな箱の中には小さな箱がたくさん入ります。 箱を生物種からなる群集と考え、群集の部分集合が集まり大きな群集集合を形成していると捉えると、野外の…
小さな島より大きな島の方が種数が多く、大陸から遠く離れた島よりも近くの島の方が種数が多い(参考:種数面積関係)。この現象を説明するためにマッカーサーとウィルソンは種の移入(Colonization)*1と絶滅(Extinction)*2を考慮して平衡理論を提唱しま…
ナショナルジオグラフィック ニュースから「マダガスカルの哺乳類は大陸から漂着」 AFBB News から 「マダガスカルのほ乳類、流木群に乗って漂着 研究」 Journal Watch Online から 「Hitchhiker’s Guide to Biodiversity」 マダガスカルは、かつての巨大大…
植物の花粉媒介(送粉)は、通常さまざまな種類の動物(鳥、昆虫など)によって行われます。ただし、一部の植物では、送粉を特定の動物にのみ依存することがあります。 海洋島では、分散力のある特定の種しか島にたどりつけなかったため、大陸などで優占して…
恐竜が種子散布を行っていたくらいですから、現存する爬虫類も植物との共生関係をもっていてもおかしくありません。実際、トカゲやヤモリが花を訪れて蜜を舐めたり、果実を食べたりすることは頻繁に観察されてきました。これらの観察結果を集計してみると、…
ハワイ諸島では、ただ1種の祖先から多くの種に分化してきた動植物がいくつも知られています。キキョウ科のロベリア類(126種)、カタツムリのハワイマイマイ(100種)、ハワイショウジョウバエ(800種以上)、カザリバガ(350種以上)、ハワイメンハナバチ(…
ハワイ大学には、大学の教員が主な編集者となって発行している「Pacific Science」という雑誌があります。日本語に訳すと「太平洋地域の自然科学」とでもいいましょうか、動物学、植物学、分類学、生態学、地質学、海洋学、古生物学、考古学といった多様な分…
ウォーレス(Alfred R. Wallace)の「Island Life」(1881年)の復刻版を買ってみました。何かの本で、「島の生活」と訳されていましたが、「島の生命」の方が適している気がします。 目次 Part 1: 生物の分散 Chapter 1: 導入 Chapter 2: 分布の基本 Chapte…
国立公園など保護区を設定するときに、どのような基準を用いて決めれば良いのでしょうか。できるだけ単一の大きな面積を残すのが良いのか、細切れでも良いから大きな面積を残すのが良いのか。これについて過去に大きな論争がありました。 マッカーサーとウィ…
英国軍艦ビーグル号でガラパゴス諸島を訪れたダーウィン(Chales Darwin)は、生物進化を確認するに至る重要な観察を行ったと言われています。ダーウィンフィンチ(ガラパゴスフィンチ)がその重要な観察対象としばしば思われがちですが、実はダーウィンは現…
昨日紹介した書籍「The Theory of Island Biogeography Revisited(島の生物地理学理論の再検討)」について。編者による序文を読むと、2007年に「The Theory of Island Biogeography(島の生物地理学の理論)」出版40周年としてハーバード大学にてシンポジ…
マッカーサー(Robert H. MacArthur)とウィルソン(Edward O. Wilson)による「The Theory of Island Biogeography(島の生物地理学の理論)」(1967年)の出版から42年、以後の知見をまとめた本が出版されました。 The Theory of Island Biogeography Revi…
ハワイ諸島において、さまざまな生物群が多様に分化し、多くの固有種が生まれてきました。また、多様化した一部の種が他の太平洋の島々に渡り、さらに種分化して多様性が増加するというメカニズムが明らかになりつつあります。 ハワイで多様化したショウジョ…
植物とその受粉を担う動物(ポリネーター)との関係には、しばしば驚くようなつながりがあります。 中国は海南島に固有のランで、ミツバチの警報フェロモンを真似た匂いを出し、その天敵であるスズメバチをおびき寄せて送粉してもらうらしい。 世界で約3万種…
陸産貝類(いわゆるカタツムリ)は、特に島では固有種が多くその移動能力の小ささや分布域の狭さから、世界でも最も絶滅しやすい生物群の一つです(参考:世界で最も絶滅してしまった生物とは・・・)。 絶滅の主要因として、人が島に入植した時代では生息地…
外来種が生態系に与える問題点を考えるとき、その外来種は他の外来種や在来種とも深く結びついていることを念頭におく必要があります。個体数が増加した外来種の場合はなおさらでしょう。 以前に、外来種のネコとネズミ、そして保全対象となる海鳥を考えたと…
植物の果実がしばしば色鮮やかに目立つのは、動物に食べてもらってその中に含まれる種子をよそに運んでもらうためでしょう。とくに、鳥は、さまざまな植物の果実を食べ、その移動能力の高さから、優秀な種子散布者といえます。 インドネシアの海洋島・クリス…