保全

島嶼生物地理学の理論を保全へ応用:SLOSS 論争とは

国立公園など保護区を設定するときに、どのような基準を用いて決めれば良いのでしょうか。できるだけ単一の大きな面積を残すのが良いのか、細切れでも良いから大きな面積を残すのが良いのか。これについて過去に大きな論争がありました。 マッカーサーとウィ…

ダーウィンのマネシツグミ

英国軍艦ビーグル号でガラパゴス諸島を訪れたダーウィン(Chales Darwin)は、生物進化を確認するに至る重要な観察を行ったと言われています。ダーウィンフィンチ(ガラパゴスフィンチ)がその重要な観察対象としばしば思われがちですが、実はダーウィンは現…

アリのいなかった島(2)海鳥のヒナを襲う外来アリ

今日は午後に Ph.D. Defense(博士論文公聴会)がありました。 ハワイ諸島にはもともとアリがいなかったことが知られていますが、現在では多くの種が侵入し(参考)、在来生態系に影響を与えていると考えられています。その影響の一つとして、海鳥のヒナがア…

ゴミを食べるコアホウドリ

多様性の保全や外来種関係などでいつも参考にしているのが、Conservation Magazine の Journal Watch Online です。最近出版された論文をブログ形式で紹介しています。ナショナルジオグラフィックに比べて、保全などに関係したちょっと暗い話題が多いのです…

ハワイでキャンプ:絶滅種の再発見をめざして

ハワイマイマイ類(Achatinella)は約100種が知られていますが、その多くが絶滅したと考えられています。特にオアフ島はハワイマイマイの種数が多く(42種)、人による攪乱が最も大きいため、絶滅種(もしくはその絶滅危惧種)が最も多い島でもあります。 他…

生物的防除が落とした影(5)スペシャリストを用いても危険?

今日は研究室のミーティングで論文紹介をすることになったので、最近勉強中の生物(的)防除のリクスに関する論文を紹介してみました。 これまでの事例から、いろいろな種の天敵となるようなジェネラリストを生物防除目的に導入してしまうと、本来ターゲット…

生物的防除が落とした影(4)ハワイでの是非をめぐって

害虫を防除するためにその天敵を放す生物(的)防除(Biological Control、Biocontrol)*は、ターゲットとしない種にまで影響を及ぼす可能性があります。特に、ハワイ諸島のようなもともと天敵が少ない環境下では多数の固有種が、生物防除によって放たれた…

生物的防除が落とした影(3)タヒチでカタツムリが大量絶滅?

陸産貝類(いわゆるカタツムリ)は、特に島では固有種が多くその移動能力の小ささや分布域の狭さから、世界でも最も絶滅しやすい生物群の一つです(参考:世界で最も絶滅してしまった生物とは・・・)。 絶滅の主要因として、人が島に入植した時代では生息地…

島から外来種を除去する順番

外来種が生態系に与える問題点を考えるとき、その外来種は他の外来種や在来種とも深く結びついていることを念頭におく必要があります。個体数が増加した外来種の場合はなおさらでしょう。 以前に、外来種のネコとネズミ、そして保全対象となる海鳥を考えたと…

キューバのハシジロキツツキは別種で絶滅?

北米大陸にかつて分布していたハシジロキツツキは、カリブ海の大島、キューバにも分布していました。北米大陸と同様、キューバでもこの100年で急速に個体数を減らし、絶滅危惧種の代表的な存在です。 以前に少し触れたかもしれませんが、キツツキというのは…

絶滅種を再発見:絶滅カツオドリは現存する種と同一種だった

古くに絶滅したと思われる種について、その形態や生態がよくわかっていないことも多いでしょう。実際、すでに絶滅されたと考えられていたカツオドリの一種が、現存する種と同一種であることが報告されています。 ナショナルジオグラフィックニュース 「絶滅…

ハシジロキツツキの再発見をめぐる論争

絶滅を証明するには長い時間がかかることが多いのですが、一度でも再発見すれば即絶滅していなかったことになります(絶滅は“悪魔の証明”)。しかし、再発見をめぐっても興味深い論争がおこったこともあります。 北米に生息していた大型キツツキの一種ハシジ…

マダガスカルに固有の糞虫は森林破壊で半数が絶滅?―絶滅判定は“悪魔の証明”

国際自然保護連合(IUCN)のまとめたレッドデータによると、哺乳類は記載種のうち24%、鳥類では12%がすでに絶滅したことが知られているが、種数の多い昆虫ではわずか0.07%、甲虫に絞ると0.02%しか絶滅が記録されていないようです(参考)。 これは、哺乳類や…

島に固有のカタツムリが気候変動で絶滅?

島における種数の平衡理論に従えば、種の移入と絶滅が頻繁におこっているということになります。しかし、特定の島にしか残存しない種の場合、その絶滅はそのまま種の絶滅となってしまうでしょう。 セイシェル諸島に固有の Rhachistia aldabrae というカタツ…

島の外来ネズミ類:侵入の歴史、生物相に与える影響、駆除

通常、野生のネズミは、大型捕食者の餌となったり、樹木の種子散布に貢献していたり、生態系の維持にさまざまな役割を果たしていることはよく知られています。しかし、もともとネズミがいなかったような環境下では、生態系のバランスを著しく壊してしまいま…

米軍会議に出席?

今日は、US Army(米陸軍)の保全関係の会議に参加させてもらいました。Rさんが研究室のスタッフや研究内容の概要を、大学院生の一人が Kaala 山の陸貝相についてを、それぞれパワーポイントを使って紹介していました(私は見てただけです)。 「大学教授の…

世界の島々にみる世界遺産(自然遺産)

日本の代表的な海洋島である小笠原諸島を、世界遺産(自然遺産)の登録候補として近々申請を行われるようです(ニュース)。 自然遺産は、IUCN(国際自然保護連合)の評価によって、以下のいずれかの項目または複数の項目に該当する地域が指定されています(…

世界で最も絶滅してしまった生物とは・・・

すでに地球上から姿を消してしまった絶滅生物といえば何を思い浮かべるでしょうか。最近では中国のヨウスコカワイルカが絶滅したと言われて話題になりました。日本だとニホンアシカが絶滅種です(そういえば、最後の記録は竹島でした)*。 絶滅種に関しては…

島で外来捕食者を駆除する時の注意点:‘Mesopredator Release’に関連して

一般に、開発などによって森林が孤立化したり断片化すると、真っ先に姿を消すのは、生息に比較的大きな面積が必要な最上位捕食者(大型捕食者で、トラとかピューマとか)であることが経験的に知られています。最上位の捕食者がいなくなることで、群集にはど…

小笠原の外来種問題とその対策

何度かふれていますが、小笠原諸島は、ハワイ諸島と同じく海洋島で、多くの固有種が知られているとともに外来種による強い影響を受けています。ハワイに来る前に参加していたプロジェクトに関連して、「地球環境」という雑誌の特集号として、小笠原諸島の外…

ドードーの歌

今日の米国は、キング牧師の休日で、三連休最後の日でした。最近、アパートの部屋がとても過ごしやすいので、のんびりしているとあっという間に休みが終わることが多いです。しかし、せっかく天気も良いのに、外出しないともったいないのは確か。買い出しに…

臨床と保全:類比?

医学の基礎研究で得た知識や技術を応用するのを臨床(医療)とするなら、生態学を応用する場の一つとしての(広い意味で)保全というのがあるでしょう(*1)。生態学を志す研究者にとって、研究のoriginality(独創性)を模索するのは当然です。しかし、保…

ハサミムシのドードー

先日、ロード・ハウのナナフシの話で、最後に、セントヘレナ島のハサミムシについてふれました。そのリンクをはった先のハサミムシの画像(合成写真?)は、実際の種類とは異なっていたましたので、変更いたしました。http://www.earwigs-online.de/Lhercule…

島で再発見されたナナフシ

大きな生物というのは一般の興味をひくし、それがさらに絶滅してしまった、となれば、気になってしまうのはなぜでしょう。特に、海洋島にすむ生物は、固有種であることが多く、絶滅しやすいことが知られています。 「島の大型昆虫の絶滅とその再発見」という…

娯楽と保全

ハワイといえばサーフィン。先日訪れたHaleiwa Beachでは、サーフィンの大会が開かれていました。この季節、波が高く、サーフィンにはもってこい、という感じでした。と、その横の砂浜では、アオウミガメが人を全く恐れることもなく甲羅干ししている姿がたく…

オアフ島のコアホウドリ:メス同士の子育て?

土曜日はBさんらにオアフ島の西端のKaena Point付近まで連れて行ってもらいました。 当地周辺では、毎年、コアホウドリが数十ペア繁殖する場所として著名で、繁殖はまだのようでしたが、すでに成鳥はやってきていました。ま、オアフ島(Oahu)とコアホウドリ…