ドードーの歌

 今日の米国は、キング牧師の休日で、三連休最後の日でした。最近、アパートの部屋がとても過ごしやすいので、のんびりしているとあっという間に休みが終わることが多いです。しかし、せっかく天気も良いのに、外出しないともったいないのは確か。買い出しにも行かねばならないということで、午後からワード・ショッピングセンターの方へ自転車で出かけました。


 ハワイでショッピングといえば、アラモアナ・ショッピングセンターですが、ワードもなかなか良い場所です。ここには、アラモアナよりも大きな書店があるというので、訪れてみました。


 Borders(ボーダーズ)は、米国大手書店チェーンとのことで、その内装は、映画「You've Got Mail」のTom Hanks演じるJoe Foxがニューヨークで手がける大手書店とそっくりでした。2階建てでゆったりとした空間にコーヒーショップがあって・・・という感じです。CDやDVD売り場もあって、さすがにホノルル最大の書店でした。Scienceの並びにはやはりダーウィン関係が充実していました。「ビーグル号航海記」「種の起原」などいろいろな版(小さな字から大きな字まで)がそろっていました。


 日本語でも訳本がでている「Song of the Dodo」が売っていたのでおもわず購入してしまいました。本当はアマゾンなどで買う方が安いのですが、せっかく訪れた書店なので何か買いたかったのかもしれません。すでに日本語版「ドードーの歌」の方を買って読んでいたものの、ハワイに持って来なかったし、日本語版では引用文献が大幅に削られていたので細かい文献をチェックしたかったというのもあります。


 タイトルからは、何の本かわかりにくいのですが、島の生物学からはじまり、種数ー面積関係(SAR)から発展した「保護区域は、単一の大面積がいいのか、複数の小面積がいいのか(いわゆるSLOSS論争)」や、外来種による島の生物の危機などが紹介されています。


例えば、
島の生物絶滅でいえば
モーリシャスドードーがどのように絶滅していったか
タスマニアタイガーの絶滅への軌跡
グアム島での外来種ブラウンツリースネークによる固有鳥類の絶滅


島の生物学でいえば
・いかにマッカーサーとウィルソンが島の生物学の発展を導き、シンバーロフらの検証作業が行われたか(E. O. Wilsonへのインタビューあり)


保全生物学でいえば
・ダイアモンドとシンバーロフのSLOSS論争(D. Simberloffへのインタビューあり)
・T. Lovejoyらのアマゾン熱帯雨林を使ってのSLOSS論争の検証作業Minimum Critical Size of Ecosystem Project


など、島の生物学、保全生物学創始者たちを中心に逸話なども紹介されています。SARとか、SLOSS論争とか、MCSEPなどについては、あまりに膨大な論文が出ていますが、この本を読むことで、なんとなく流れだけはつかめることができるでしょう。また、機会があれば、ごくごく簡単にでも紹介できればと思います。

 著者はジャーナリストで研究者というわけではないのですが、島の生物学や保全をやっている人にはとても参考になる本なので、要チェックです。しかし、こんな本まで日本語で読めるとは、日本の科学翻訳はとても盛んであると感じます。ただ、いつも思うのですが、日本語って英語よりかさばるのは確かでしょう、翻訳本も上下巻に分かれることが多いし・・・。


訳本
ドードーの歌—美しい世界の島々からの警鐘〈上〉

ドードーの歌—美しい世界の島々からの警鐘〈下〉