ハワイの珍奇なる虫たち(2)網を使わず爪で狩るクモ

 
 ハワイ諸島で独自に進化した興味深い生態の第二弾として、網を使って獲物を捕るのをやめてしまったクモの生態をとりあげてみました。


 ハワイ諸島、カウアイ島にのみ生息するアシナガグモ科の一種、Doryonychus raptorは、前脚の先端にある爪が、他の種に比べて異様に長くなっていることが知られていた。その機能を調べるために、カウアイ島のさまざまな地点で本種を探索し、夜間の捕食行動を観察した。



以下の論文より
http://www.hindawi.com/GetArticle.aspx?doi=10.1155/1991/84789



 調査の結果、カウアイ島のごく限られた地域でのみ、本種の生息が確認された。このグループでは本来、網を使って餌昆虫を捕らえることが知られているが、本種は網を使わず、前脚にある長い爪を餌昆虫に素早く突き刺すことで狩りを行っていた。長い爪は、餌を捕獲するために特殊化したものだった。


文献


Gillespie RG (1991) Predation through impalement of prey: the foraging behavior of Doryonychus raptor (Araneae, Tetragnathidae). Psyche 98: 337-350.


Gillespie RG (1992) Impaled prey. Nature 355: 212-213.


 クモといえば、網を使って餌を捕まえるイメージとしてありますが、この種は網を使って捕るのはやめて、爪で「突き刺す」という方法で捕まる、というのが独創的なようです。ただ、ハエトリグモの仲間など、徘徊性の種は網を使わずに襲って食べる種もけっこういます。

 ハワイ諸島の形成史でも述べたように、カウアイ島はハワイ諸島の中でも最も古い島の一つです。緑然豊かな場所だそうで、まだ行ったことがないのですが、是非一度訪れたいとは思っています。