ハワイ諸島が、北西方向に連なる歴史性を持っていることは紹介しました(ハワイ諸島形成史)。これを考慮することによって、ハワイで現在見られる多くの固有種がいかに進化してきたかを説明しようという仮説があります。
ハワイやガラパゴスのような海洋島での進化は、地理的な隔離による異所的な種分化によって主に起こると考えられている。最も古い島であるカウアイ島に祖先種がたどりつき、その後、新しい島が形成される度にその島へと分散することで個体群が隔離され、新たな種が分化していったと仮定する。祖先種から最初に分化した種がカウアイ島に、次に分化した種がオアフ島に、次がモロカイ島、マウイ島、そして最も最近に種分化した種がハワイ島に分布するとしたそのパターンを‘progression rule’と呼んでいる。これは、分岐学、系統分類学で著名なWill Hennigの‘progression rule’(ある単系統群において分布の周辺部に最近に分化した種が、中心部にその起源が見られること)をハワイ諸島にも当てはめた考え方である。
これまでハワイ諸島の多くの固有動植物がprogression ruleに従って種分化してきたと考えられてきた。近年、これらの検証作業が分子系統解析によって明らかにされつつある。
図. progression ruleに基づき単系統群の種分化を仮定したもの(それぞれの島の●はそれぞれに分布する種を指す)。ちなみにモロカイ、ラナイ、マウイ、カホオラウェ島はもともと一つ島が沈降して分かれたと考えられおてり、まとめて「マウイ・ヌイ」と呼ばれる。@Geology.comの地図をもとにCowie & Holland (2006)を参照して作図。
なかなかわかりやすい話なので、ハワイ諸島の生物の進化を考える上では欠かせない仮説です。今後さまざまなハワイの生物の進化に触れていきたいと思いますが、このパターンに従うかどうかを考えることで、その進化史の深さ、浅さがわかるかと思います。