ハワイ諸島の形成史

 ハワイ旅行に行ったら、まず聞かれるのがどこの島を訪れたか、でしょう。生物の話をするときも、島の名前とその位置は重要ですが、それには、それぞれの島の歴史が異なっていることが関連しています。ここで、ハワイ諸島の島の名前と歴史をまとめておきます。


 いわゆるハワイ諸島は、東から、ハワイ島(ビッグアイランド)、マウイ島、ラナイ島、モロカイ島、オアフ島、カウアイ島を含みます。ハワイ島は、富士山よりも高い4000mを超える山からなり、逆にカウアイ島は、最高でも1500m程度です。しかもハワイ島では火山がしばしば噴火するので有名です。ハワイ島の南東沖48kmにホットスポットと呼ばれるマグマの吹き出し口があり、ここがハワイ諸島を形成の出発点なのです。噴火してできた島が、北西方向に移動していった結果が、現在のハワイ諸島を形成しているわけです。島や大陸がプレートに乗って移動するのは、ワグナーが提唱した「大陸移動説」とそれが発展した「プレートテクトニクス理論」によって知られています。つまり、ホットスポットは不動ですが、地球の表面を覆っているプレートが移動します。ホットスポットから吹き出たマグマの冷えた固まり(島)がプレートに乗って年に数センチずつ移動することで、北西方向に点々と島が形成されたということです。



Geology.com をもとに作成


 このように、ハワイ諸島は、北西から最も古い島であるカウアイ島(約510万年前)から、最も新しいハワイ島(43万年前)まで、時間軸にそった配置をしているわけです。しかし、実は、カウアイ島がハワイ諸島で最も最初にできた島というわけではありません。さらに北西に1500kmにわたって、Atolll(環礁)が連なった北西ハワイ諸島というのがあります(ミッドウェイもその一つ)。つまり、ハワイ島が最も新しく今も噴火によって島が形成されていますが、他の噴火活動が終わった島々は、時間とともに浸食が進んだり沈降が起こったりして、北西にいくほど標高も低くなっています。また、北西ハワイ諸島はさらに浸食や沈降がおこったことで、もともと島の周囲にあった珊瑚礁のみが残り環礁となっているようです。従って、現在海上に出ているもっとも西の島であるクレ(Kure:最高標高は10mもない)が最初のハワイとするなら、その形成時期は約2500万年前にもなります。しかし、現在は海の底に沈んだ島々がさらに北西方向に広がっているので、その歴史はさらに古いことになります。


 それぞれの島の生物相を明らかにし、島ごとの歴史を考慮することで、ハワイ諸島の生物進化を明らかにできるというわけです。


参考文献

清水善和(1998)ハワイの自然―3000万年の楽園. 古今書院.

Cowie RH, Holland BS (2008) Molecular biogeography and diversification of the endemic terrestrial fauna of the Hawaiian Islands. Philosophical Transactions of the Royal Society of London B 363: 3363-3376.