進化学

米国開催の進化学会に参加

オレゴン州のポートランドで開催された Evolution 2010 に参加してきました。実は、日本国外で開催された学会に参加するのは初めての経験です。 ポートランド市街を走るマックス・レイル(町の中心部に限り無料で利用できる) ポートランドは札幌とほぼ同じ…

種分化に必要な最小の島面積は?

大きなスケールでの種数ー面積関係を生み出すメカニズムの一つとして「島が大きくなるほど種分化がおこりやすい」ことを紹介しました。 カリブ海のアノール類の種分化と島面積の関係を調べたオリジナルな論文は2000年にNatureに掲載され、その後「The Theory…

生物地理学の教科書

「Biogeography 3rd edition」出版からおよそ5年、はやくも4th editionが出版される模様です。 Lomolino、Riddle、Brownといった従来の著者に、「Island Biogeography: Ecology, Evolution, and Conservation」や「Journal of Biogeogaraphy」の編者でおなじ…

全生物は単一祖先種から進化してきたか

ダーウィンの「種の起源」の訳本を読んで、考察の深さに大変感銘をうけたのは昨年末のことでした(参考:「種の起源」を読んで)。 特に最後に全生物の祖先種に関する考察は特筆すべきものでした。再度引用しておきます。 動物はせいぜい4種類か5種類の祖…

ゴンドワナのタイムカプセル:虫入り琥珀

米国科学アカデミーの紀要にエチオピアで発見された琥珀の論文が出ていました。 ナショナルジオグラフィック ニュースでもいくつかの記事に分けて写真入りで紹介されています。 「アフリカの虫入り琥珀:未知の品種」 「アフリカの虫入り琥珀:ゴンドワナ」 …

メクラヘビの生物地理

ナショナルジオグラフィック ニュースから 「新種のメクラヘビ、生息分布の謎に迫る」 ミミズそっくりの小型(せいぜい全長20cm)のヘビ、メクラヘビ類は、地表や地中にいるアリやシロアリの卵や蛹などを食べると言われています(もちろん人に危害は加えない…

海より陸上で種多様性が高い理由

海より陸上で生物の種数が多いのはなぜか?*1 この理由に関する仮説が、サイエンス誌にとりあげられていました。ネイチャーやサイエンスでは、原著論文、総説以外にも、ちょっとしたトピックについてライターが取材して書いている場合があって、具体的な引用…

水陸両生のハワイカザリバガ

ハワイの珍奇なる虫たちシリーズの3回目でとりあげたハワイカザリバガ類(Hyposmocoma)ですが、続編が米国科学アカデミーの紀要に最近発表されたようです。 ハワイで数百もの固有種に分化したカザリバガですが*1、幼虫がカタツムリを食べる肉食の種類や、渓…

恐竜による種子散布

中生代のシリアゲムシによる花粉媒介を想像していたら、中生代といえば恐竜が優占していたことを思い起こしました。 鳥類も恐竜の一部から進化してきた可能性を考えれば、現在鳥類果たす生態的な役割を恐竜が担っていたとしても特に不思議ではありません。空…

被子植物以前:シリアゲムシによる送粉

ハナバチ、ハエ、チョウが花を訪れ蜜を吸い、そのお返しに花粉を運んで受粉する(以後、送粉と呼ぶ)。そんな被子植物と昆虫の共生関係はいたるところで観ることができます。ハナバチやハエ、チョウ類では花蜜を効率良く摂取するために口器を特殊化させた種…

緑ひげ効果とは

昆虫などが他の動物から捕食されるのを免れるために、その体色や形を背景である草木の色に似せるのを隠蔽的擬態と呼ばれており、その体色を隠蔽色と呼んでいます。一方、自らが危険であるとか毒をもっていることをアピールするために派手な体色をもつ昆虫な…

「利己的な遺伝子」を読んで

研究室に入ったばかりの学生たちがリチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)の著書を知らないことに先生は嘆いておられました。もちろんその著書とは「The Selfish Gene」(1976年)のことです。 私は大学院に入ってからすでに十年以上たっているのでおお…

「種の起源」を読んで

ダーウィン(Charles Darwin)による「種の起源」の出版から150年を記念して新訳が出版されました。改めて通読し、さらに「読み方ガイド」で当時の背景をふまえながらダーウィンの考えたことをたどってみました*。 「種の起源(上)」 「種の起源(下)」 …

博覧強記

11月からずいぶん涼しくなった気がします。といっても、夜の気温で2度ほどさがったくらいですが(26℃)、日本でいう秋の夜長な良い気候です。去年の経験からいうと、気温はやや下がるもののこのまま初夏まで快適なまま移行するでしょう。つまり、読書をする…

「種の起源」出版から150年

ダーウィンによる「種の起源」がちょうど150年前(1859年11月24日)に出版されたということで*、昨日から「種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)」を読み始めました。 これまで、岩波文庫の八杉龍一訳の「種の起原」があったのですが、これはもうずいぶん前…

ダーウィンのマネシツグミ

英国軍艦ビーグル号でガラパゴス諸島を訪れたダーウィン(Chales Darwin)は、生物進化を確認するに至る重要な観察を行ったと言われています。ダーウィンフィンチ(ガラパゴスフィンチ)がその重要な観察対象としばしば思われがちですが、実はダーウィンは現…

島の生物地理学の理論:ウィルソンによる回想

昨日紹介した書籍「The Theory of Island Biogeography Revisited(島の生物地理学理論の再検討)」について。編者による序文を読むと、2007年に「The Theory of Island Biogeography(島の生物地理学の理論)」出版40周年としてハーバード大学にてシンポジ…

島の生物地理学の理論、再び

マッカーサー(Robert H. MacArthur)とウィルソン(Edward O. Wilson)による「The Theory of Island Biogeography(島の生物地理学の理論)」(1967年)の出版から42年、以後の知見をまとめた本が出版されました。 The Theory of Island Biogeography Revi…

ウォーレスが投稿していた雑誌

19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したウォレス(Alfred R. Wallace)*は、動物地理区の境界線の解明(ウォレス線)や、ダーウィン(Charles Darwin)と同時に「自然選択(淘汰)説」を発表した博物学者として著名な存在です。 ダーウィンは裕福な家に生ま…

ダーウィンが投稿していた雑誌

自然選択説を提唱したダーウィン(Charles Darwin)は、職業的な研究者(大学教授など)というわけではなく、いわゆる資産家で自宅で研究を行ってきた19世紀の博物学者です。彼の著名な業績の多くは、本という著作物として出版されているわけですが、彼自身…

ダーウィンフィンチの研究者

島嶼部での適応放散の例として、鳥類では、ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチ類とハワイ諸島のハワイミツスイ類が有名です。ハワイミツスイ類の適応放散は美的にもその規模もすばらしいのですが、多くの種がすでに絶滅してしまっています。一方、ダーウィ…

島で草が木になる理由:偉人たちの仮説

本来、草である種が、隔離された海洋島などで木本化するということがあることは以前にふれました(島で木になる植物)。 小笠原諸島の固有種ワダンノキ(キク科) なぜ木本化するのか? いくつかの仮説が提唱されています。 1. Competition Hypothesis(競争…

ダーウィンによる講義

休みの間に更新したいと言いながらも結局できませんでした。 というのも、連休中に、投稿していた論文の掲載を断る(リジェクト)Eメールを受け取って、なんだか勉強する気にならなかったからです。3ヶ月に一度はこのてのメールをもらうのですが(ハワイに来…

ダーウィンのイベント

今週は机に座っている時間が少なく、更新があまりできませんでした。いろいろ書きかけの記事もあったので、この連休(月曜日は祝日)を使って、更新しておきたいところです。 ダーウィンの200回目の誕生日(2月12日)には、ハワイ大学の図書館でいくつかのさ…

あこがれの昆虫学者

昆虫少年だった私は、いろいろな昆虫の形態や生態の写真を眺めるのが今でも大好きです。日本には、幾人かの著名な昆虫写真家がいて、それぞれの写真集は、発見ものの科学論文のように衝撃的で、言語の壁を容易に越え、世界中の人が楽しめるレベルにあると思…