せっかくの良い季節なのに、天気がこうも悪いと本当にもったいないなあと感じる日々です。
さて、最初に投稿してから長く時間がかかっている論文があります。その改訂を行いようやく再投稿しました。論文の改訂や再投稿について、いろいろ反省することが最近多いので、恥をしのんで書き留めておきます。
一生懸命とったデータをまとめて論文を専門誌の編集部に投稿しても、そのまま出版されることはほとんどありません。多くは編集者と匿名の審査委員(査読者)によって掲載の可否を判定されます(参考:査読という仕事、論文の再査読)。運良く出版の価値ありと認められても、多くの場合、出版前に原稿の改訂を要求されます(電子メールでコメントが送られてきます)。
改訂は、編集者と査読者の指摘に従って行われるのですが、わずかな修正(たとえばミススペルとか)で済む場合(小改訂 minor revision)と、根本的に論文を書き直す必要があったり、解析をやり直さなくてならない場合(大改訂 major revision)とがあります*1。
小改訂の場合、あと少しが見えているので、コメントを読んで一気に改訂して再投稿できてしまう場合がほとんどでしょう。やっかいなのが大改訂の場合です。コメントが送られてきた当日から改訂をはじめ、淡々とすすめ、数日のうちに再投稿するのが理想ですが、これを苦もなくできる人ってどれくらいいるのでしょうか? 実は私自身、研究にまつわるさまざまな過程において、この大改訂が最も嫌いな作業です・・・。確かに、優秀な査読者による批評に従って改訂すると、論文として優れたものになることは間違いありません。しかし、査読者と自分自身の感性がピッタリとあうことはめったにないわけで、それこそ本当につらい作業だと感じます(参考:査読コメントが辛いわけ)。
というわけで、この改訂を行う期間は通常、1〜3ヶ月くらいの猶予をもらうのですが、いつも再投稿は〆切ギリギリになってしまいます。今回も本当にぎりぎりでしたし、前々回は数ヶ月もオーバーしてしまいました(事前に編集部に問い合わせて〆切を延ばしてもらうことも可能)。このままでは成長しないので、反省しているうちに問題点を整理して、今後の対策を練りたいと思います。
なぜすぐに論文の改訂をして再投稿できないのでしょうか?
・査読者のコメントを読むのがつらい(自分の仮説、発見について論理的に批判されるのが身をえぐられるように堪える)
・〆切までには時間があるし、いざとなったら〆切を延ばしてもらえば良いと思ってしまう
・再解析をやるのが面倒くさい
・今やっている仕事があるので、すぐには取りかかれない
・見飽きた原稿を読むのが楽しくない
というように、なんらかの理由をつけて改訂を先送りにして逃げてしまうのです(あくまで私自身の場合です)。
私自身の改訂は以下の通りに行っていますが、特にどの過程で行き詰まっているのでしょうか?
(1)査読コメントを読む
(2)査読コメントを項目順に並べた文書ファイル(Rレター)を作る
(3)査読コメントについてすぐに直せるところから直し、Rレターの項目ごとにコメントに対する対応を書き込む(どのように改訂したか、など)
(4)1〜3を繰り返す
(5)どうしてもうまく直せない、コメントに従えない項目について、Rレターにその理由を論理的に書く
(6)改訂原稿とRレターを通して読んで整合性をチェックする
(7)改訂原稿とRレターを英文校閲に送る(直す箇所が少ない場合は校閲には送らない)
(8)校閲結果を取り入れ、全体を読み直してチェックし、再投稿する
私自身の場合、(1)にとりかかるのが遅いように思います。とりあえずリジェクト(掲載拒否)されていないことを確かめたら、もらった改訂案などが書いてあるコメントをちゃんと読まずにしばらく寝かせてしまうのです。次なる難関は(5)です。再解析をすべきか、データを追加すべきか、いややっぱり従わない理由をなんとか考えて乗り切ろうか、などと悩んでしまうのです。すぐに結論が出ない場合が多く、しばらく考えてからにしようと、改訂原稿から離れてしまうことが多々あります。
ここを乗り切るには、なんらかの暗示が必要と考え、過去の自身の論文投稿履歴を調べて、ある種の光明を見いだしました。
・原稿の改訂を要求された場合、コメントに従って修正し再投稿すれば96.3%は最終的にその雑誌に掲載されてきた*2。
これは投稿した論文が高い割合で受理されてきたことを示しているわけではありません。投稿した論文が掲載拒否される確率はかなり郄いのですが、ここでは、一発掲載拒否は免れた場合、改訂要求に従い普通に再投稿すれば、ほとんどが受理されてきたということです。しかし、改訂して再投稿しても逆転で掲載不可の判定が下ったことがあります。この場合、改訂や再改訂が長引いたため、途中で編集者や査読者が変更になったことが原因の一つでした。つまり、ダメだったことをあまり考えず、さっさと直して原稿を送った方が良いということです*3。
ただし、
・一応は掲載不可とするが、問題点を改訂した原稿を改めて投稿することが認められる(薦められる)場合は、再投稿しても60%しか掲載されなかった*4。
というパターンも明らかになりました・・・。これは、改訂項目が多すぎて改訂に時間がかかりすぎる場合や、追加実験やデータを要求する場合、また投稿から判定までの期間を短くしたいという雑誌側の事情から最近増えてきたパターンです(研究業界では一旦リジェクトとも呼ばれる)。つまり、再投稿しても改めて掲載を断られる可能性があるので、ますます改訂するのが億劫です。ただ、基本的には大改訂と作業はかわらないので、ともかく精神的に強くもってなんとか乗り越えるしかないということでしょう。
同じように論文改訂に悩んでいる人の少しでも助けになれば幸いです。