今日のセミナーは、ハワイ固有の水鳥であるハワイセイタカシギ*の研究についてでした。
セイタカシギですから、もちろん湿地に生息し、繁殖もそこで行われます。ふ化率は比較的高いにも関わらず、ヒナの死亡率が極めて高いようで、マングースやネコ、イヌといった外来の捕食者によって食べられている可能性があります。そこで、その原因を調べるためにヒナに発信器をつけてその動向を追ってみたところ、なんと、ウシガエルの体の中から発信器が見つかったらしい。ウシガエルが大きいとはいえ、ふ化したてのヒナが小さいとはいえ、カエルが鳥を食べるのはなかなか信じ難いことです。
ハワイのような孤立した海洋島ではカエルを含む両生類が元来分布しないことはよく知られています。本州から1000km離れた小笠原諸島でも在来の両生類はいません。南米大陸から1000km離れたガラパゴス諸島は、イグアナやゾウガメといった爬虫類天国のイメージがありますが、両生類の在来種はいません。両生類にとって、海を渡って分散するというのはかなり難しいということでしょう。爬虫類の卵には殻による乾燥耐性があるため、自然の筏(倒木など)に乗って海を渡る可能性がありますが、両生類の卵は乾燥に極めて弱く淡水を必要とします。
オオヒキガエルがその旺盛な食欲と毒によって、オーストラリアのさまざまな在来生物に影響を与えることはよく知られていますが、ウシガエルがよもや鳥のヒナを食べるとは思ってもみませんでした。ちなみに、ハワイのウシガエルたちの主な餌は、外来のザリガニや魚のようです。
ハワイ諸島に持ち込まれ定着した両生類(持ち込まれた年代、場所、目的)
コキーコヤスガエル(Eleutherodactylus coqui) 1990年代初頭(カリブ諸島より意図せず)
オンシツガエル(Eleutherodactylus planirostris) 1990年代初頭(カリブ諸島より意図せず)
オオヒキガエル(Bufo marinus) 1932年(プエルトリコより害虫駆除目的で)
マダラヤドクガエル(Dendrobates auratus) 1932年(パナマより蚊駆除目的で)
ウシガエル(Rana catesbiana) 1880年代?(カリフォルニアより食用目的で)
ツチガエル(Rana rugosa) 1896年(日本より害虫駆除目的で)
*セイタイカシギ(Himantopus himantopus)の亜種(H. h. knudseni)またはハワイ地域個体群とされているようです。