アリのいなかった島(4)種の同定

 今日のセミナーはハワイのアリ類についての概説と、サンプルを使って同定をしてみようというものでした。


 以前に紹介したようにハワイにはもともとアリが1種も分布していませんでした(同様にシロアリ、社会性ハナバチ、社会性カリバチも分布していない)。つまり現在みられるアリはすべて外来種ということ。1880年代に最初に記録された時点で6種、その後直線的に増加し、2005年の総説では47種がリストアップされていました(参考:ハワイのアリ相)。その後もとどまるところを知らず、2010年現在では57種にも達しているらしい。


現在ハワイで個体数を増やし生態系や衛生上問題となったり潜在的になりそうな種を紹介(他の熱帯・亜熱帯の島々で問題になっているのと基本的には同じメンバー)。


 続いて、アリの同定をビノキュラー(双眼実体顕微鏡)を使って行いました。検索表としてはオンラインシステムである「Discover Life」を使いました。ここでは世界中のアリのデータベースが充実しているようで、地域名である「ハワイ」を入力すると57種がリストアップされます。


そして、各検索項目に該当するボックスをチェックして検索をかけると、次々に種が絞られていくというわけです。検索項目としては、体サイズ、頭部の色、胸部の色、腹部の色・・・など。最終的に絞られた種をクリックするとさまざまな角度や部位の標本写真や生態写真をみることができます。


私もサンプルを1個体もらってためしてみたら、「Tapinoma melanocephalum」とうまく同定できました。


 ハワイのアリはすべて外来種で、比較的よくわかっている種類が多く同定しやすいというのがあるでしょう。とはいえ、こういうデータベースが充実していて誰でも使えるというのも良いことだと思います。


他に紹介されていたデータベースとして以下のサイトがあげられていました。


 もちろん日本産アリ類のデータベースもますます充実しており、オンライン版に加えて図鑑版の両方にとてもお世話になっています。


 このようなデータベースは、日本でも世界でもアリ研究者の情熱によって支えられているのをありがたく感じます。

*1:もともと1種が記録されていたが、最近さらに近縁種が3種見つかっているらしい。