島が大きくなると生態系機能も変化する

 島の面積は、種数種分化食物連鎖動物の体サイズなどさまざまな生物学的要素に影響を与えることが知られています。島の面積が大きくなると、植物群落など群集構造もまた変化することもあるようです。島の生物群集が変われば、生態系の中での生物と環境との相互作用(生態系機能)にも影響を与えるでしょう。


 スウェーデン北部にある湖に浮かぶ50の島において、島の面積と生態系の特性との関係を調査した。これらの島は、約9000年前に氷河の後退によって形成されたため、同じ歴史と起源をもっている。


 面積が1.0ha以上の大きな島では遷移初期樹種であるヨーロッパアカマツやセイヨウウスノキが優占していたが、0.1ha以下の小さな島では遷移後期種であるヨーロッパトウヒやガンコウランの一種が優占していた。


・ヨーロッパアカマツの密度とバイオマス:大きな島(>1.0ha)ほど高くて大きい
・ケカンバの密度とバイオマス:中間の大きさの島(0.1-1.0ha)で高くて大きい
・ヨーロッパトウヒの密度とバイオマス:小さな島(<0.1ha)で高くて大きい


このような島の面積に関連した植生の変化は、大きな島ほど雷による森林火災の頻度が高いことが原因と考えられた。実際、年輪に残る燃え痕を調べることで過去250年におこった火災頻度や、炭素同位体解析によって腐植に含まれる炭の測定結果は、大きな島ほど森林火災が頻繁に起こっていることを示していた。


さらに、
・合計植生のバイマス:大きな島ほど大きい
・多様性指数(H'):小さな島ほど高い


・腐植(humus)のフェノール濃度:面積の増加とともに減少
・腐食のpH:面積とともに増加
・腐食の窒素濃度:面積の増加とともに減少
・微生物の基礎呼吸:面積とともに増加
・基質誘導呼吸:面積とともに増加
・微生物生体量:面積とともに増加
・地中のリター分解速度*:面積とともに増加
・地表面のリター分解速度*:面積とともに増加
・地中のリターの窒素濃度*:面積の増加とともに減少
・地中のリターの窒素消失速度*:面積とともに増加
・単位面積あたり腐植の量:面積の増加とともに減少
・単位面積あたりの腐食の窒素量:面積の増加とともに減少


また、単位面積あたりの炭素量は小さな島ほど多く、腐食に蓄積されている割合が高く、樹木に蓄積されている割合は低かった(大きな島ほど炭素量は少なく、腐食の割合は低く、樹木体の割合が高かった)。


 つまり、小さな島での高いフェノール濃度は、窒素利用可能性を減少させ、小さな島での樹木の葉に含まれる窒素濃度が減少し、結果として低いC/N比をもつリターを生産し、これは分解速度を減少させてさらなる有機物の蓄積を促していた。


 植物の種多様性は、小さな島で最も高かった。つまり、多様性が最も高いところで生態系機能が低かったことを意味している。


*セイヨウウスノキの葉をリターバックに封入して腐植表面および8cmの深さに埋めて、1年後の分解速度を測定


文献
Wardle DA, Zackrisson O, Hornberg G, Gallet C (1997) The influence of island area on ecosystem properties. Science 277: 1296-1299.


 まとめると、島の面積が大きくなると雷に当たって森林火災が起こる頻度が増加し、これによって島間で植生が異なり、植物−微生物−土壌間の相互作用も変化する、という研究でした。


一方、島の面積の増加にともない多様性が減少するという傾向は、これまで知られているパターンとは異なっているといえます。