アッテンボローの魅力:カメラのシャッター音をマネる鳥

 先日何かの話の中で、Rさんがあのアッテンボローに会ったことがある、ということを伺いました。


 Sir. David F. Attenborough は、英国の有名プロデューサーで、BBCで多数の自然番組を手がけ、自身がその番組にも登場しているので、実際にテレビで観たことがある人も多いでしょう。しばしば、ディスカバリーチャンネルアニマルプラネットNHKなどで放映されています。ちなみに、映画監督/俳優の Richard S. Attenboroughはお兄さんだそうです。


 Rさんがビショップ博物館に勤めていた時に、BBCの大勢のスタッフを引き連れ取材でハワイにやって来たらしく、二日間くらいをともに過ごしたとのこと。Rさんもアッテンボロー卿の人柄はVery niceとおっしゃっていました。


 アッテンボローの映像は、自然や生物の不思議さやおもしろさを一般に向けて紹介していて、とてもすばらしい仕事だと思います。一部の映像は、YouTubeで気軽に観ることができます。例えば、アクセス数の多かった以下の映像では、オーストラリアの Lyrebird が野外でワライカセミなど様々な鳥の鳴き真似をして、さらにはカメラのシャッターやチェーンソーなど人工音まで真似てしまうということを、彼のいつもの解説で紹介しています*1。


YouTubeにおけるLyrebirdの映像(BBC Worldwide)
http://www.youtube.com/watch?v=VjE0Kdfos4Y


 実は私はアッテンボローの映像や本*2が大好きで、ハワイにもDVDを持参してきたほどです。彼のDVDからいろいろ学ぶことが多いのです。



*1 Lyrebird のオスが他種の鳴き声を真似るさえずり(mimetic song)の適応的意義については、より正確に鳴きまねできるオスがメスに選ばれる(female choice)という仮説が有力とされているようです(Zann & Dunstay 2008)。ただし、Lyrebird以外にも鳴きまねする種類はいて、それらも含めいろいろな仮説と関連研究を調べたところ、そういった進化的な意義を実験的に示せた研究はほとんどなく、鳴き真似は単純な音と複雑な音を学ぶ練習の機会にすぎず(learning mistakes hypothesis)、mimetic songはsongではなく単なるcallである、という意見もあるようです(Kelley et al. 2008)。このようにアッテンボローの取り扱う題材は、研究者の世界でも注目されている現象が多いのです。


文献
Zann R, Dunstan EY (2008) Mimetic song in superb lyrebirds: species mimicked and mimetic accuracy in different populations and age classes. Animal Behaviour 76: 1043-1054.


Kelley LA et al. (2008) Vocal mimicry in songbirds. Animal Behaviour 76: 521-528.


*2 生物ごとのDVDは、鳥、虫、植物、両生爬虫類ごとにボックスで販売されています。また、それぞれの映像と関連する写真と解説集も発売されています。私は、DVDボックスは虫と植物、写真集は鳥、虫、植物を持っています。DVDの種類は各国でプレイヤーによって違うので、米国で買うと日本のプレイヤーで再生できません。よって鳥については帰国して買う予定です(渡米前に買っておけば良かった・・・)。DVDと同じ内容が、ディスカバリーチャンネル、アルマルプラネット、NHKで放映されることがあります。書籍の「植物の私生活」は写真が良かったのといろいろと勉強になりました(ただし参考/引用文献などの出典がないのが残念)。


DVDボックス

The Life of Birds(日本語吹き替え版 DVD-BOX)

Life in the Undergrowth(日本語吹き替え版 DVD-BOX)

The Private Life of Plants(日本語吹き替え版 DVD-BOX)

Life in Cold Blood(吹き替え版今のところなし:DVDも日本で再生できない版のみ)


写真と解説集

鳥たちの私生活(翻訳版:書籍)

Life in the Undergrowth(翻訳版今のところなし:書籍)

植物の私生活(翻訳版:書籍)

Life in Cold Blood(翻訳版今のところなし:書籍)