‘Hawaiian Blue’ に出会えた日

 憧れていた生物にフィールドで出会うことはとても嬉しいことです。ということで、たまにはフィールドに出かけたお話でも。


 Bさんらが高校生二人を連れてハワイマイマイの調査に行くというので(参考)、同行させてもらうことにしました。


 道中、学部生と高校生たちが宿題の多さについて話していました。「宿題」とはずいぶん久しぶりに聞く言葉です。小中高とずいぶん多くの宿題を課せられ、その大変さを少し思い出しました。しかし米国では大学生にも多くの宿題が出るようです。


 天気予報では山間部は雨ということでしたが、幸運にもほとんど降られることはなく、暑くもなく寒くもなく、心地よい天気でした。


 とある山中に、外来動物の侵入を防ぐための柵に囲われた場所があり、その中でハワイマイマイの一種が保全されています。今日は、いつもの個体数のカウントと高校生向けのささやかな調査をしました。高校生たちはハワイマイマイをみて「Pretty! 」と喜んで写真をたくさん撮っていました。古のハワイでは首飾り(レイ)にハワイマイマイの殻が使われていたこともあるそうなので、若い女の子にもうけるの当然かもしれません。


 ハワイマイマイはともかくとして、今回は、いろいろ新しいものを観察する機会に恵まれました。その中でも特筆すべきは、ハワイルリシジミに出会えたことでしょう。


 ハワイには在来の蝶はわずか2種類が知られているだけです(もちろん現在は多くの外来種がいます)。熱帯といえば蝶が乱舞しているイメージがありますが、ここハワイでは寂しい限りです。しかしその2種、カメハメハチョウ(アカタテハの仲間)とハワイルリシジミは、ハワイでしか見られない固有種です。ちょうど、ハワイルリシジミの幼虫の食草であるコア(ハワイを代表する固有樹種)の花が咲き始めていたのが良かったのでしょう。複数個体を観察することができました。


 多くのシジミチョウでは裏側の翅(たたんだ時に見える方)は比較的地味なのですが、ハワイルリシジミはとても美しいのです。こちらでは‘Hawaiian Blue’とも呼ばれています(ただし、ブルーは表側の青色を指しているのかも)。



コアの花芽を訪れる成虫


 同じく海洋島・小笠原諸島の固有種であるオガサワラシジミは非常に減少してしまって、何度も通っていたのにほとんど見かける機会がありませんでした。それに比べてハワイルリシジミはそれほど観察するのは難しくないだろうと聞いていました。しかし、「見たい!」と思っていた昆虫を見ることができた時のドキドキ感は何ともいえません。その嬉しさを繰り返し味わいたいから、昆虫少年たちは図鑑を眺めては夢想するのかもしれません。


 そんな気持ちを思い起こさせてくれる良い一日でした。