サメの求愛:ネムリブカは噛み付いて交尾する

 受け入れ研究者である先生は、ハワイ大学の研究センターに所属していますが、同時に動物学部(Department of Zoology)の教員(Facultiy)も兼ねています。最近、動物学部の大学院生によるPh.D(博士号)を取得するためのPh.D Defense(博士論文の口頭試問)がよく開かれています。先週は、海の魚群集をテーマにした院生でしが、今回は、サメを扱ったものでした。これまで、主に陸の動植物を扱う研究室に滞在してきたので、海の動物学の話は少し新鮮です。やはり、海洋動物といえば、ハワイ!と安易に考えて間違いないくらい海の動物を扱った研究者も多いようです。
 でも、サメ(怖い印象)といっても、小笠原でもおなじみだった、ネムリブカ(サメの名前)についてでした。


 野外で、サメの交尾行動はめったに観察されない。サメのオスの腹鰭には、交接器(clasper)がついてこれでオスであることがわかる。さらに、オスの腹には、siphon sacと呼ばれる特殊な器官があるが、これが交尾の時にどのような役割を果たしているかは、いくつかの仮説が提唱されているものの、野外での検証はほとんどなされてこなかった。例えば、オス交尾器の進化で著名なW. Eberhardは、siphon sacはトンボなどで知られているような、他のオスの精子を取り除くために用いられているのではないか、という仮説を提唱している。
 ココス諸島で撮影されたネムリブカの交尾行動のビデオ解析から、siphon sacは、海水とともに精子をメスの交尾器官へうまく流し込むために用いられており、他のオスの精子を取り除くためには用いられていなかった。


文献
Whitney NM, Pratt HL, Carrier JC (2004) Group courtship, mating behaviour and siphon sac function in the whitetip reef shark, Trianodon obesus. Animal Behaviour 68: 1435-1442.


 サメの交尾では常識らしいですが、交尾の際、オスがメスに噛み付いる映像はちょっと衝撃的でした。論文では集団での求愛行動も報告していました(メスは複数のオスに噛み付かれていました・・・)。それにしても、他人の撮影したビデオ(たった3つの動画)を使って、一流雑誌に載せる技術は参考になるかも。

 ちなみに、ネムリブカは、お昼に海に入っていてよく出会う小型のサメの一種ですが、人が襲われることはないようです。小笠原でもビーチで普通に泳いでいました。夜行性なので、昼間は寝ているようにおとなしいから、「眠(ねむり)鱶(ふか)」という名前がついたようです。

http://en.wikipedia.org/wiki/Whitetip_reef_shark