研究室の学生の歩む道

 今の季節、ハワイ大学では、semester(学期)の終わりの試験やらレポートなどで学生は忙しい季節のようです。研究室に来ている学部生もレポートに追われているようで、先生や大学院生の人にみっちりチェックしてもらっています。

 今の研究室に出入りする学生には、大学院生(graduate student)と、いわゆる学部生(undergraduate student)とがいます。大学院生は、試験と口頭試験によってPh.D candidateという資格をとった後、博士請求論文を提出してdefenseを行うという長い道のりを経てPh.Dがもらえるようです。一方、学部生は、course work(単位取得)の一環として個人で行える小さなprojectを割り当てもらってそれをこなす場合と、ボランティアとして大学院生や先生の研究を手伝う場合の両方があるようです。研究の規模の大小にかかわらず、いずれもprojectと呼ぶのが格好よく感じます。Rさんの研究室に3人、Bさんの研究室にも3人くらいの学部生が出入りしていて、個々の作業に取り組んでいます。皆、おおむねまじめで、週に4、5日は研究室に現れて実験や飼育を行っています(でも絶滅危惧種のカタツムリを誤ってゴミ箱に捨ててしまったこともあった)。defense前で忙しいたKさんの手伝いで、土日も手伝いに来ていることがありました。先週くらいには、projectのレポートの締め切りがあって一生懸命机に向かっていました(でも仕上がらなくて一日延ばしてもらっていた)。今日は発表(presentation)があるらしく、10分くらいで話せるPowerPointを作成していました。これをみている限り、日本の学部生の卒論とあまり変わりはありません。

 昨日、この間まで研究室に学部生として出入りしていて、今はMedical Schoolに通っている学生が研究室にやってきていました。先週テストが終わったようで、すっきりした感じでした。ちょうど二年前訪れた時、研究室で会って以来です。米国のMedical Schoolは、日本の医学部と違って、普通の大学を卒業した後で入る、専門の大学院として位置づけられているようです。彼の場合は、大学でカタツムリやタニシの研究(生物学)を行ってから、Medical Schoolに入学したわけです。彼は、とても真面目で、人当たりもよくて、研究室でも人気もののようでした。すでに彼のプロジェクトは論文になっているし、先日の新聞でも調査している彼の姿が掲載されていました。また、Medical Schoolに入るには、一定期間のボランティア(場所は、医療機関、研究室などいろいろ)をした経験が必要だとか。ボランティアが経歴となるのは医学部だけに限りません。そのため、研究室で実験の手伝いをしているという学部生にも、それが経歴になるわけです。さらに、それぞれのprojectが論文になれば、学部生にも研究室の両方にとっても良いわけです。

 このように、多くの学部生は同じ研究室にとどまることはなく、別の大学院や研究室へと進んで行くことが多いようです。さらに、この間は、Bさんのところに小さなprojectを手伝いたいと高校生までやってきていました。女子高生がカタツムリ?と思ってしまいましたが、なんでもScience fairの(科学研究の)コンテストに参加したいようで、そのテーマを探しているのだとか(ハワイマイマイの殻はとても美しく見栄えが良い)。もちろん、こういうコンテストに参加し良い成績がおさめれば、それも彼女の経歴になるわけで、今後の大学入学や奨学金等に重要になってくるのでしょう。

 米国で医者になるには、Medical Schoolで少なくとも4年を経てM.D.を取得し、Internshipを1年、さらに研修をおこなっていくという流れです。もちろん、普通の科学研究者になるのも大学院でPh.D.をとってポスドクを経て職についていくなど、同程度の長い年数を要します。米国でも日本でも、学位を取得するには多くの時間を費やして勉学に取り組んでいかねばならないんですね。