外来植物の駆除に新たな手法:銃で撃つ!?

 先日、外来種防除に関連する発表(talk)があるというので、Rさんに連れられて参加しました。アメリカでの大学の教員(faculty)は、tenure trackといって、最初に任期付きの常勤職を経て、数年後に任期のない(permanent)常勤職に昇進していきます(日本でも最近この形式が増えてきました)。今回の発表は、その昇進に向けた大事なもののようでした。セミナー室では、研究内容、発表にかかわる項目に5段階評価をつけるべく用紙が参加者に配られていました。もちろん、署名と身分(教員、学生、その他のスタッフか)を記すわけですが、学生でもこういう評価に加われるというのには少し驚きました。

 さて、ハワイをはじめ、海洋島では、非常に多くの外来植物の種が帰化していることは周知の事実でしょう。今では、合計種数が(在来種を含めて)従来の二倍近くにもなっているとか。多くの外来種は路傍でほそぼそと生育しているにすぎないのですが、一部の種で極めて侵略的になって、天然の植生にも侵入し生態系を改変するほどにもなっています。これら外来種による影響についての研究は、また機会をみて紹介したいと思います。今回のセミナーでは、これらの外来植物などの駆除にあたっての方法論を紹介していました。


 雑草駆除には噴霧器を使った除草剤散布が用いられる。しかし、外来種など、ピンポイントで駆除していくには、労力がかかる。また、蔓植物や木本植物など、目標が高い位置にある場合、従来の噴霧器ではアプローチが難しい。そこで、新たに提案するのが、ペイントガン(おもちゃの銃)に除草剤の入ったカプセル(本来ならペイントボール)を充填して、外来植物めがけて撃ち込むという手法だ。銃なので弾が当たった箇所は物理的にも損傷する。この手法を用いて効率的な駆除を目指す。名付けてHerbicide Ballistic Technology (HBT)。



Leary J (2008) HBT: Herbicide Ballistic Technology. YouTube (http://jp.youtube.com/watch?v=hwM8qn0GLHQ)


 アメリカらしい。実際行われているかどうかはともかく、こういう大事な発表の場で提案してしまうところが、日本では考えられないでしょう。実際、YouTubeに登録されているので無料で誰でも動画を観ることができます。しかし、パンパンと撃ち込んでいるところなんて遊んでいるようです(従来の駆除は大変な肉体労働なので、この手法ではゲーム感覚があって、若干の楽しさがあるかもしれません)。最後はヘリコプターから撃ちまくっていました。これも「ダイハード」等のハリウッド映画の影響なのでしょうか。

 それにしても興味深いのは、発表ではデータが全く出てきませんでした。アメリカ人の発表に多く見られる出版論文の記載もいっさいありません(動画へのアクセス方法は宣伝していました)。それどころか他人の論文の引用もなかったような・・・。それでも話し方、動画の見せ方は巧みで、十分笑いはとっていました。隣の大学院生は「Cool! Yes!」とか、やたら興奮していました。
 笑いをとれば昇進できる世界かどうかは結果をみるまでわかりませんが、いろいろな研究者がいるなあと感じた今日この頃です。


*ちなみに、このブログでは、この除草剤散布の方法が良いとか悪いとか、除草剤の是非については全くコメントしていません。こういうお話がありましたよ、という紹介だけです。一応念のため。