海洋島での外来種定着頻度

 島への人の行き来によってどれだけの種が持ち込まれ、定着しているのでしょうか。ハワイのような人口が多くひっきりなしに人が行き来する島では調査するのは困難でしょう。


しかし、海洋島の中には、その隔離度の高さと地形から人を滅多に寄せつけてこなかった島が知られています。例えば、大西洋の南に浮かぶゴフ島(Gough Island:面積 91km2:標高 0-900m)*は、他の陸地から極めて離れており(南アフリカから2816km、南アメリカから3360km)、島は断崖で囲まれているため、訪れた人といえば探検家や博物学者くらいだそうです。



ゴフ島の位置(Google より作成)


つまり、ゴフ島では、これまで何度ヒトが上陸したか、その回数がある程度正確に記録されているというわけです。これまでの博物学調査によって明らかになった生物リストを精査することで、ヒトの上陸によってどれくら外来種が持ち込まれたかを推定することができるわけです。


 ゴフ島でこれまで記録された昆虫(有翅亜綱)は99種、このうち71種もが外来種であった。この割合(72%)はこれまで調べられた南半球の海洋島の中で最高値であった。ゴフ島へのヒトによる最初の入島以来(325年間で)233の踏査を数えた。結果、3-4回の入島ごとに昆虫1種が定着に成功したことになる。


しかし、定着に成功した種数よりもずっと多くの外来種が島に持ち込まれているだろう。


持ち込まれた外来種のうち約10%(5-20%)が野外に定着するという「十分の一法則(the tens rule)に従えば、合計710(355-1420)種の昆虫がゴフ島に持ち込まれたと推定される。つまり、ゴフ島への1回の上陸ごとに3種以上が持ち込まれていたことになる。


ただし、大陸より島の方が外来種が定着しやすいと一般に考えられているので、この値はやや過大評価かもしれない。


文献
Gaston KJ, Jones AG, Hänel C, Chown SL (2003) Rates of species introduction to a remote oceanic island. Proceedings of the Royal Society of London B 270: 1091-1098.


 島への探検や学術調査といったごく限られた上陸だけでも、多くの外来種を持ち込んできたということでしょう。


*ちなみにゴフ島はイギリス領に属し、1995年に世界遺産(自然遺産)に登録されています。