セミナーと送別会

 最近、Bさんが実験を教えたいというので、学部生に混じってDNA抽出とPCRを習っています。実は、ピペットを持つのも十数年ぶりで、DNAに関する実験は一度もしたことがありません。最初、「パイペットを持って」と言われても、何を持つのかさえわからないありさまでした(ピペットのことでした)。Bさんには今後の共同研究への足がかりにしたいという狙いがあるようですが、直接研究成果につながらなくても、こういう習い事は久しぶりなので、新鮮です。


 実験の合間にも、論文書きを進めておかねばならないのですが、なかなかはかどっていません。


 金曜日は恒例のセミナーでした。


 午前の部は、少し前にふれた、ハワイミツスイや外来鳥類のオアフ島個体群での鳥マラリアの感染状況についての報告でした。研究の背景で、ハワイにおける鳥マラリアの概略も説明してくれたので、いろいろ勉強になりました。いくつかの文献が紹介されていたので、さっそくダウンロードしておきました。

 
 午後の部は、スミソニアン(国立自然史博物館)の V. Funk さんによる世界のキク科植物の多様性と起源に関するお話でした。世界でも最も多くの種数を含むキク科の大分子系統樹を作成中らしく、その中身を、美しい写真を交えながら解説していました。ハワイには、7族、13属、108種のキク科が知られいて、それらの位置付けについても(ついでに)解説していました。しかし、世界の圧倒的な多様性に比べると、ほんのわずかな種(少なくとも7祖先種)がハワイにたどり着いて放散したにすぎないことがわかります。ハワイだけでなく、さまざまな地域で非常に多くの種へと放散しているのを知りました。世界を見渡せば、美しく珍奇なキクの花の多様性に感銘をうけます。その中に、日本のコウヤボウキの花も写真で紹介されているのが印象的でした。


 講演者のFunkさんは、ハワイにおける生物相の形成についての重要な本を編集されていて、以前、アマゾンでチェックした時には売り切れていたのですが、古本で出ているようなので、再度注文してみました*。この本では、ハワイの動植物の進化について‘progression rule’に沿った仮説の提示されているようで、それを基に近年分子を使った研究などによる検証が進められているわけです。

Hawaiian Biogeography: Evolution on a Hot Spot Archipelago


 さらに金曜日は、ハワイを去るKさんの送別会がありました。Kさんは学位論文を大学に提出し終え、来週頭からポスドクとしてスミソニアン(国立自然史博物館)に移るのです。思えば、私がハワイに到着して以来、研究室で姿を見ない日がないくらいずっと研究に励んでおられました。文字通りの働きマンでしょう。ちなみに、Kさんは私のことをサンドウィッチマンと呼んでいます(当初自炊のできない宿舎に住んでいたので毎日サンドイッチを食べていたから)。


 大学近くのスポーツバーで、R研究室とB研究室の学生などが集まり、飲み会が行われました。Kさんの奥さんから、スミソニアンのあるワシントンDCは、ハワイに比べて極寒であること、しかし家賃はホノルルよりずっと安いことなどを伺いました。考えてみれば、ホノルルは、studio(ワンルーム)で800〜1,000$は普通だし、1 bedroom(1LDK?)だと1,000から1,500$もかかってしまうので、世帯持ちのポスドクなら、かなり厳しい土地かもしれません(ワシントンだと、ホノルルと同じ値段なら2,3倍は広い部屋に住めるとのこと)。ちなみに私はこれまで家賃5万円以下の部屋にしか住んだことがなかったので、今の 1 bedroomの部屋をなかなか決められませんでした。ハワイはアメリカ合衆国の中でも最も家賃が高い州の一つだそうです。


 飲み会では、アメリカ人の好きなスポーツ、ゲーム、休日の過ごし方、恋愛事情、お酒の飲み方と酔い方など、いろいろなことが垣間みられました。12時過ぎ近くまで飲んでいたので、さすがに疲れてしまいましたが。


*なんと、本の売り手は同じキャンパスの人であることが判明。来週にも自ら配達してくれるそうです。ハワイの本だからあたりまえなのか、すごい偶然なのか、よくわかりませんが。