ハワイマイマイの進化

 ハワイの陸貝類の固有性の高さ(在来種のうち99%以上の固有率)は以前に紹介しました。その中でも、ハワイマイマイ類(写真)は、その殻が大型で美しい色彩をもつため、特筆すべきハワイの重要な生物といえます。一般にハワイマイマイ類とは、Tree snailと呼ばれ、ハワイマイマイ亜科(Achatinellinae)に属する種のことを指します。これまで4属(Achatinella、Partulina、Perdicella、Newcombia)100種ほどが知られており、すべて島単位の固有種です。



各島での分布は以下の通り


カウアイ島(1種:化石種)
オアフ島(42種)
モロカイ島(16種)
ラナイ島(3種)
マウイ島(35種)
ワイ島(3種)


 多様性の中心はオアフ島マウイ島にあります。祖先種は最初にどの島にたどり着き、種分化をはじめたのでしょうか。


 現存するハワイマイマイ亜科23種(4属を含む)と、ハワイ諸島内、太平洋の島々でのその他の亜科の種群を含めた分子系統樹を調べた。その結果、ハワイマイマイ亜科は、ハワイ諸島内で1種の祖先種から分化したことが示唆された。また、その起源はオアフ島にあり、オアフ島内での分化がおこり、一部が分散しマウイ・ヌイ、ハワイ島の種へと分かれていった可能性があった。カウアイ島に化石種が知られているが、これは、形態からマウイ島とモロカイ島にしか分布しない属Newcombiaに含められる。そのため、カウアイ島起源説よりも、マウイ島、モロカイ島で分化した種から再度分散してカウアイ島に渡った説の方が有力だ。このように一部の例外はあるものの、多くの種が古い島から新しい島へと分散し種分化していったという意味で、いわゆる“progression rule”に従っている。


文献
Holland BS, Hadfield MG (2004) Origin and diversification of the endemic Hawaiian tree snails (Achatinellidae: Achatinellinae) based on molecular evidence. Molecular Phylogenetics and Evolution 32: 588-600.


 100種のうちわずか23種しか調べられていませんが、悲しいことにその他の種は絶滅してしまった可能性が高いそうです。今回調べられた種の中にもすでに野生では絶滅してしまい、飼育下でのみ現存している種もいるらしい。他にも、野外でわずか1、2個体群しか残っていない種もいて、ハワイマイマイ類の保全の優先度は極めて高いようです。


 ハワイマイマイ類は、樹上性で、固有樹木の葉につく菌を食べたり、産仔数が極めて少なく(卵ではなくそのまま小貝を産む)、成熟するのに数年かかるなど、他のカタツムリとは一風変わった生態を持つことも特徴です。これらの生態的な要因が、絶滅の危機と関連しているようです。絶滅や減少の直接的な原因については、また別の機会に紹介したいところです。