ハワイは種のるつぼ

 大学のIDを作ってもらったり、アパート探しをしたりして過ごしています。RさんとBさんをはじめ、事務の人もすごく親切で助けてもらってばかりです。ただ、なかなか前進しなことも多く、研究が実際スタートするにはまだまだ遠い道のりです。これでは精神的によくないので、日本でとりためたデータをまとめて論文にしていくことだけは進めておこうと、とりくみはじめた今日この頃です。

 ところで、

 ハワイは、日系人をはじめアジア人が多いことで有名です。ただの日本人の私でもよく道を聞かれるくらいです。日本の苗字が非常に多く、見かけも日本人の知り合いにそっくりの人が多くて、興味深いです。といっても、英語しか話していません。なので、西洋系の人から東洋系の人まで同じ英語を話しながら、昼食をとっているのをぼんやりとみていると、不思議な感覚にとらわれるわけです。そんな、人種のるつぼと言われるハワイでは、人間以外の生物も、世界のさまざまな地域からやってきているようです。


 先に、ハワイにたどりつけた生物は非常にすくなく、その祖先種をもとに種分化を繰り返し、何十種、時に何百種にもなったグループがあることを紹介した。それらの形態やDNAを調べることで、どこの場所を起源としてハワイにやってきたのかが推定されている。


 ハワイでは、ハワイミツスイと呼ばれる50種を超える鳥の仲間が知られているが、これらの種は、同じ祖先種から食性に応じて(花の蜜食や昆虫食など)さまざまな嘴の形をもつ種が知られている。これは、アメリカ大陸からたどりついたフィンチ(マシコ属の一種)を祖先種としているらしい。また、唯一のほ乳類、コウモリもアメリカ大陸からやってきたようだ。昆虫では、小型のハナバチ類であるハワイメンハナバチ(またはハワイムカシハナバチ)類が60種ほど知られているが、これらは東アジアを起源にしている。これまで調べられた中では、日本の種ともっとも近いことがわかっている。カミキリムシの仲間だと、ハワイトラカミキリ類が知られているが、これはアメリカ大陸に起源があるらしい。カタツムリの仲間では、美しい殻をもつハワイマイマイ類や、軟体部に比べて小さな殻をもつオカモノアラガイ類は、祖先種候補が太平洋の他の島々にも分布している。


 このような古くにハワイにやってきて固有種となった生物以外にも、近年、人によって持ち込まれた生物もさまざまな地域を起源としている。例えば、日本でもおなじみのメジロはハワイで外来の鳥類の代表だ。日本人の移民が多かったので、一緒に連れられて来られたのだろうか。他にはアフリカマイマイという巨大なカタツムリが外来種として知られているが、アフリカ大陸からアジアを経由して食用目的でつれてこられたものだ。また、農作物の害虫となってしまったアフリカマイマイを退治するために、アメリカ大陸から連れられてきた肉食のカタツムリ、ヤマヒタチオビも有名だ。しかし、これらの外来生物たちは、さまざまな形で、ハワイ固有の生物に脅威を与えているのだが、これはまた今度紹介したい。


参考文献

Cowie RH & Holland BS (2008) Molecular biogeography and diversification of the endemic terrestrial fauna of the Hawaiian Islands. Philosophical Transactions of Royal Society B, 363:3363-3376.


Ziegler AC (2002) Hawaiian Natural History, Ecology and Evolution. University of Hawaii Press, Honolulu, Hawaii, USA.