地上を徘徊するコウモリ

 いつも更新を楽しみにしているのが、ナショナルジオグラフィック(National Geographic)のサイトです。最近の記事で、「“歩くコウモリ”の化石が定説を覆す?」というのがありました。


 ニュージーランドには、何度か述べているように、コウモリを除く哺乳類は元々分布していませんでした。通常、大陸などの森林では、ネズミ類などの齧歯類が林床を徘徊しているのですが、ニュージーランドではなんと固有コウモリたちが林床を歩いて生活していたのです。ただし、島で飛べない鳥が進化するのとは違って、このコウモリたちが飛ぶ能力を失ったわけではありせん。



Lesser short tailed bat Mystacina tuberculata
地上を徘徊するニュージーランド固有のコウモリ


このような地上を歩くコウモリは、強力な捕食者や競争者が少ないニュージーランドという島環境で進化したと考えられてきました。しかし、最近発表された論文では、オーストラリアにも類似した“地面を歩くコウモリ”の化石が見つかったそうです。つまり、ニュージーランドで“歩く”という行動が進化したわけではないのかもしれません。


しかし、強力な捕食者が少なかったニュージーランドで現在まで生きながらえてこられたのは確かでしょう。ただし、ニュージーランドの種も、ヒトが持ち込んだ外来ネズミ類によって絶滅したり、激減しているそうです。


原著論文
Hand SJ, et al. (2009) Bats that walk: a new evolutionary hypothesis for the terrestrial behaviour of New Zealand's endemic mystacinids. BMC Evolutionary Biology 9: 169.