島の固有種:その進化

 これまで島では固有種と固有種ではない在来種がいることをしばしば述べてきました。しかし固有種にもその起源によって区分があります。前回は、島には、(1)Oceanic islands(海洋島)、(2)Continental islands(大陸島1)、(3)Continental fragments(大陸島2)があって、(3)は大陸から長期間隔離された場合は、(1)に匹敵する固有率を有するとしました。その仕組みについてここで整理しておます。


(1)海洋島での種数と固有種
 海洋島では、海上に出現した火山からなる島であるため、その陸上生物の種数は0からはじまる(教科書で教わる、いわゆる一次遷移)。そして島外からの移入で生物相が形成されるため、徐々に種数が増加する。また、供給源となった場所から地理的に隔離されることで新しい(固有)種が形成される(これをneoendemismとよぶ)。また、島内、および島間での隔離、空きニッチによる生態的解放などによって、さらなる種の適応放散(adaptive radiation)が起こり、固有種数が増加する。このため、種数は、島外からの移入と、諸島内での放散によって、増加する。ハワイ諸島のような隔離度の高い諸島では、移入よりも放散による種数の増加が上回ることもある。


(2)Continental islandsでの種数と固有種
 海洋島とは違い、当初はほぼ大陸と同様の陸上生物相と種数を有する。しかし島の面積効果により島内の絶滅種数が移入種数を上回り種数が減少する。しかし、大陸からの距離も近く、隔離の期間が短いため、海洋島よりは種数が多く、固有種の分化も少ない。ただし、大陸にいた種が何らかの原因で絶滅して、島内だけで生き残って(遺存)固有種になることがある(これをpalaeoenemismとよぶ)。


(3)Continental fragmentsでの種数と固有種
 当初は、(2)と同様、大陸と同様の陸上生物相と種数を有する。同様に、島の絶滅種数が移入種数を上回り、種数が減少する。また、(遺存)固有種が形成される(palaeoenemism)。プレートの移動によって大陸からの距離が離れたり長期間の隔離によって、種数はさらに減少する。しかし、諸島内で(遺存)固有種をもとに適応放散が生じる。一方で、海洋島同様、移入した種をもとに固有種が分化し、さらに適応放散が生じることもある。これらの放散によって固有種数および全体の種数が増加する。


 以上の三つを改めて整理すると、島になった歴史は、(3)が古く、(2)が新しい。(1)は新しい場合も古い場合もある。固有率は、(1)と(3)が高く、(2)が低い。また、種数の増加は、(1)が増加し続けるのに対し、(2)は減少し(移入もあるので大きくは減少しない)、(3)は一度低下し再び増加する。これらの例として、(1)はハワイ諸島ガラパゴス諸島を、(2)は本州や北海道を、(3)はマダガスカルニュージーランドがある。


参考文献


Gillespie RG, Roderick GK (2002) Arthropods on islands: colonization, speciation, and consrvation. Annual Review of Entomology 47:595-632.


Whittaker RJ, Fernández-Palacios JM (2007) Island Biogeography: Ecology, Evolution, and Conservation. Oxford University Press.


 ここでいう移入は、もちろん人為的なものではなく、自然の移入を意味する。どのように隔離された島に生物が移入してくるかは、また近いうちに・・・。