ニュージーランド沈没説

 過去の超大陸ゴンドワナは、プレートに乗って現在のアフリカ大陸、南アメリカ大陸南極大陸インド亜大陸オーストラリア大陸などに分かれました。もともとゴンドワナ大陸に生息していた生物はそれぞれの島で絶滅したり、または独自に進化していきました。オーストラリアの有袋類はその例の一つです。ニュージーランドもまたこのゴンドワナ大陸の一部であったことはよく知られています(およそ8000万年前に分断)。また、ゴンドワナ大陸から分かれた後は、ジーランディア(Zealandia)と呼ばれる(亜)大陸の一部であったようです(下図参照)。同じ島国として何かと比較される日本列島も、ユーラシア大陸の一部であったわけですが。



黄色の点線が過去の大陸 Zealandiaを示す(画像はGoogleより)


 しかし、ニュージーランドの生物相は、オーストラリア大陸や他の日本のような大陸(陸橋)島とは全く異なり、コウモリ以外の在来の哺乳類は全く知られていません。


 なぜニュージーランドでは有袋類のようなゴンドワナ起源の生物相が保持されなかったのでしょうか。これを説明する仮説の一つとして、ニュージーランドは、新生代(Cenozoic)の一時期(漸新世 Oligoceneから中新世初期にかけて)完全に海面下に沈んでいた可能性があるというのです。最近の地質学的(堆積層)研究や分子系統的解析を用いた生物相の起源に関する研究からも、ニュージーランド海上に連続して存在していた証拠が見つからないそうです。つまり、ニュージーランド新生代の一時期、海面下に沈んでいたという仮説はかなり真実みをおびたものになっているようです。この仮説では約2500万年前頃に地殻変動によって再び海上に現れたとのこと。


文献


Trewick SA, Paterson AM, Gampbell HJ (2007) Hello New Zealand. Journal of Biogeography 34: 1-6.


Landis CA, Campbell HJ, Begg JG, Mildenhall DC, Paterson AM, Trewick SA (2008) The Waipounamu Erosion Surface: questioning the antiquity of the New Zealand land surface and terrestrial fauna and flora. Geological Magazine 145: 173-197.


Goldberg J, Trewick SA, Paterson AM (2008) Evolution of New Zealand's terrestrial fauna: a review of molecular evidence. Philosophical Transactions of Royal Society of London B 363:3319-3334.


 島は、大陸と一度も接したことのない海洋島と、大陸の一部であった大陸島に分けられます。この区分に従えば、ニュージーランドは大陸島の一つです。しかし、一度海面下に沈んだとすれば、陸上生物相の形成からみれば、海洋上に火山噴火によって突然現れたハワイ諸島のような海洋島と、基本的には同じといえるでしょう。実際、ニュージーランドの生物相も島に入植してきた種をもとにこの2200〜2500万年間で形成されてきたそうです。


追記:年代を一桁間違っていましたので一部訂正しました(例えば、海面上にあがった年代250万年前→2500万年前)。